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オーガニック・キッチン通信 作る人の想いも一緒に「いただきます」
2016年6月号

菅野農場

「楽しく働き豊かに暮らす」ということ

DSC3316-hp.jpg 道路の左側が除草剤を撒いた田んぼ。右側が菅野さんの田んぼ

「お米が美味しい」と嬉しい声をいただくオーガニックキッチンのお弁当。菅野さんはオーガニックキッチンのお米の生産者の一人。田植えで忙しくなる前の5月上旬、菅野さんの田んぼへお邪魔しました。

山形県は日本有数の穀倉地帯。菅野さんの田んぼがある長井市は朝日連峰と出羽丘陵地帯に囲まれた盆地で、古来より米作がさかんな地域です。

山形県の庄内地方は日本でも有数の米どころ。月山と鳥海山のふもとに広がる平野には見渡す限りの田んぼが広がります。寒暖の差が大きく、月山の豊かな雪解け水がおいしいお米を育みます。今年から新しくお米沢駅から車で約1時間。田植え前のまだ水が張られていない田んぼが見渡す限り広がる中、あちこちで除草剤を散布している姿が見られました。

「あれは畦(あぜ)に雑草が生えないように散布しているんだよ。でも、草が生えない畦は土がむき出しになって土が田んぼに流れ出しちゃう。」と菅野さん。

春から秋にかけて、菅野さんの田んぼの畦は美しい花々が咲き乱れます。除草剤を使わないそのままの自然の光景です。「雑草があることで畦が強くなる。何より次々に咲く花がキレイなんだよ。それを枯らせちゃうなんてもったいない。草は刈るもんだ。殺すもんじゃない。」確かに菅野さんの田んぼと隣の田んぼの色の違いは一目瞭然でした。

DSC3316-hp.jpg 道路の左側が除草剤を撒いた田んぼ。右側が菅野さんの田んぼ

慣行農法は嫌だ!

キャプション 菅野芳秀さん。自分の田んぼを眺めながら「ぼく、この風景が大好きなんだよね~」

菅野家はこの地に代々暮らし、お米を作ってきました。しばらくは東京で暮らしていましたが、26歳の時に山形に戻り、跡を継ぐ決意をしたのが40年前。当時は化学肥料・農薬を使った農法が全盛期。辛い農作業から解放してくれる夢のハイテクツールとして農家に受け入れられてきました。菅野家でも当時慣行栽培でしたが、本能的に「こんな農法は嫌だ」と感じた菅野さん。父親に反発しながら、農薬ではなく昔ながらの堆肥を使う方法にシフトしていくことに。

キャプション 菅野芳秀さん。自分の田んぼを眺めながら「ぼく、この風景が大好きなんだよね~」;

菅野家の憲法「4つの基本」

キャプション 息子さんの春平さんと。頼もしいパートナーです。

そして菅野さんが掲げた菅野家の憲法が「楽しく働き、豊かに暮らす」ということ。その実現のために具体的な「4つの基本」を決めて取り組んできました。

①食の安全と環境を大切にする

 通常1坪70~80株植えるところを60株に抑え、風通しを良くして病気を防いだり、殺菌剤ではなくお酢を撒いたり、害虫のイネミズゾウムシの駆除のために食用油を撒きます(日中は泥の中にいるので、油を浮かせておくことで這い出してきたイネミズゾウムシが窒息する)。さまざまな知恵と工夫で大切に育てられます。

②暮らしの自給を高める

 売るために作るのではない。自分で作った作物は、最も大切な自分の家族に食べてもらうというのが大前提。お米の他にも、鶏を大地で飼う自然養鶏にも取り組んでいて、飼料にくず米、くず野菜をブレンドし、フンは田畑に戻し、卵や鶏肉は食卓へ。あくまでも家族のために作った作物を消費者に「おすそ分け」するというコンセプトです。

③きれいな景観をつくる

 「農家の暮らしの農的景観の美しさを大事にしたいんだよね。鶏舎の脇に梅の木を植え、牧草や季節の花を植え、その中を鶏が駆け回る…みたいな。」田園ならではの景観の美しさを満喫しながらの暮らしは都会に住む私たちの憧れですね。

④家族みんなで農業に参加できるようにする

 「じいちゃんばあちゃんや子供たち、家族みんなで農作業をし、お昼にはお弁当を食べ、いろんな話をしながら同じ仕事をする。こんな楽しい事ができるのは農業ならでは。経済性を考えたら効率悪いけどね。」こんな風に家族みんなで楽しめるなら、農業の高齢化の心配も少なくなるのかもしれません。

 今では息子の春平さんが農業の中心を担ってくれています。楽しく生き生きと働く姿に、菅野家がこれまで取り組んでこられたことは、確実に豊かな未来につながっていると感じました。そんな菅野さんの米作りは今年も始まったばかり。秋には美味しいお米が実りますように!

キャプション 息子さんの春平さんと。頼もしいパートナーです。
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